おなじみのサフ!
パンを作るには酵母が必要不可欠。
家庭製パンで一番よく使われているサフのイーストを取り扱う日仏商事さんにお話を伺ってきました。
イーストをケミカルなものと思っている人も多いと思いますが、
イースト=酵母・自然界に存在している微生物です。
酵母は今のところは人間には創り出せないものなので、世界中いわゆるイースト(パン酵母)と呼ばれているものは各メーカーさんが自然界から採取してきたものを選別・保管・培養しているものなのです。
イーストにも色々あるけど、何がどう違うの?
⑴ドライイースト:水分5~6%
⑵インスタントドライイーストの赤(赤サフ):水分5~6%
インスタントドライイーストの金(金サフ)
⑶セミドライイーストの赤:水分25%(冷凍保存)
セミドライイーストの金
(インスタントブルーやピザ用といったものもありますが、ブルーは赤サフのビタミンC 無添加のもの、ピザ用は赤サフに生地の伸びをよくする酵母を加えたものだそうなので割愛します)
⑴⑵⑶の大きな違いは乾燥方法と水分量だそうです。
予備発酵の必要なドライイーストは家庭製パンではあまり使わないので、⑵と⑶について聞いてみました。
インスタントドライイーストは小分けのものもあり、未開封であれば常温で保存できるので、一番手軽に使われていますね。
セミドライは作った時のいい状態で保存されていて、保管も冷凍庫なので、一番劣化が少なく良い状態のイーストが使えるそうです。
赤と金の違いは人種の違いのようなものだそうです。
酵母の特性としては、赤は糖分が少なくても小麦の澱粉を自分で糖に変える酵素を持っているので、糖分がないパンに使います。
食いしん坊さんなので、澱粉をどんどん食べます。
それに加えてたくさんのお砂糖(糖)があると、それも食べてお腹いっぱいになって働かなくなってしまいます。
なので、糖分がたくさん入るパンにはあまり向きません。
:糖配合0~10%前後目安
金の方は、逆に糖がないと働けない、自分では澱粉を糖に変える力があまりないので、糖分の多いパンに向いています。
:糖配合5%以上目安
他に生イーストという水分の多いイーストもありますが、賞味期限が短いので、家庭ではなかなか使いきれません。
パン屋さんではよく使われていますが、こちらも赤と金のような違いの種類があるそうです。
パン屋さんはなぜ生イースト?
▶︎水分が多いので、発酵のスピードが早い。
▶︎製パン学校や教本では生イーストが使われているものが多いので、パン屋さんにとっては使い勝手が良い。
生イーストをインスタントドライに置き換えるときはどれくらい?
生イースト2%の場合▶︎インスタントドライ0.7~o.8%
生イーストとインスタントドライイーストのそれぞれの良い点悪い点
生イースト スタートが早い(イメージ的には短距離選手)
インスタントドライ 賞味期限が長い
初期のガス発生が少し遅い
生イーストからドライイーストができたのには戦争が大きく関わってきているそうです。
水分を減らして持ち運びしやすく、日持ちしやすくしてパンが主食の欧米人がどこでもパンが食べられるようにと。この辺のお話は興味深いのですが、あまり深く掘り下げると本題から外れてしまうのでこの辺で。
イーストに入っている添加物を気にされる方も多いようですが、乳化剤は水分を減らす工程でイースト菌を熱から守るためのコーティング剤としてほんの少量使われています。ビタミンCは、世界の小麦事情を考慮して、緩みやすい小麦を使ってもちゃんとパンが膨らむように、死滅酵母で緩んでしまう生地を引き締めるために入れられているそうです。
最近発売になった(取材当時2019年)リロンデル1895という長時間発酵向きのイーストもあります。
こちらは菌株は赤サフと同じですが、他のイーストに比べて長距離ランナータイプ。
今までは長時間発酵ではイーストの量を減らしてゆっくり発酵させる分、発酵で作り出す香りや旨味が少なくなってしまっていました。
リロンデルは通常のイーストに比べてスロースターターだけれど、ゆっくり長くガスを出すので、長時間発酵のとき旨味を作り出してくれるそうです。
そしていわゆる天然酵母と呼ばれている市販のものは、採取した場所は違えど、分けるとイーストの仲間です。
果物や小麦などから起こす、自家培養した酵母はパンを作るのに適した純粋培養の酵母だけでなく、さまざまな菌や酵母が混在しているので、それが独特の旨味や複雑味を出してくれるのですが、きらりと光る逸材もいれば、悪もいるかもしれません。
パンを作るエリートの酵母はイースト、良くも悪くも色々な可能性を秘めた自家培養酵母、どちらを使うかは、皆さんの楽しみ方次第ですね。